京都の舞妓の知られざるブラックな実情
2022年7月10日(日)の14時から放送されたザ・ノンフィクション「泣き虫舞子物語2022~夢と希望と涙の行方~前編」というフジテレビのドキュメント番組をあなたは見ただろうか?
この番組は様々な人間模様が見れる、民放で珍しく長い放送時間のドキュメントであり、私は毎週欠かさず見ている。
今回の「泣き虫舞子物語2022」も、色々と思う所があって良かった。
今回の話は、主人公の寿仁葉さんという中学を卒業した15歳の女性が、舞妓になるため、そして芸妓になるために奮闘するが、舞妓になれたのは良いものの、朝起きられずに稽古などに遅刻することが多く、精神的にももう辞める瀬戸際にいる、という所で今回の前編は終わる。
ちなみに、芸妓さんとは、舞妓さんの進化型である。
私は別の職業だと思っていたのだが、舞妓になった人は、次は芸妓になるために鍛錬し、芸妓を目指す、ということだそうだ。
舞妓さんとは、芸妓さんになるために通過点のようなものなのである。
そして、寿仁葉さんが憧れていた先輩舞妓の果帆さんも、舞妓にはなったが、遅刻が多く、舞妓から立ち方と呼ばれる芸妓になるのは諦め、地方(じかた)という、三味線を演奏する芸妓を目指す、という舞妓としては前代未聞の道を歩むことになった。
遅刻が多いので、稽古や仕事に支障をきたす、ということで、芸妓になるのを諦めざるを得なかった。
寿仁葉さんは、自分によくしてくれた格好良いお姉さんの挫折を目にする。
他にも、もう一人の先輩も辞めてしまった。
そんな先輩たちがもがく姿を寿仁葉さんは目にしながらも、順調に舞妓になる道を進んで舞妓になり、次はいよいよ芸妓になる、という所まで来たものの、今度は寿仁葉さんの遅刻が日常化してしまい、芸の練習などに支障をきたすことになってしまった。
前編はここで終わりで、果たして寿仁葉さんは芸妓になることを再度目指すのか、はたまたもう辞めてしまうのか、ということは後編で明らかになる。
寿仁葉さんも、果帆さんも、中学を卒業して15歳で弟子入りして舞妓になり、長くて6年修行する。
そこからさらに芸妓への修業が始まる。
二人とも遅刻癖があり、果帆さんは、なぜ遅刻してしまうのか分からない、部屋から出たくなくなると言い、寿仁葉さんは早く起きているものの、メイクに時間をかけ過ぎてしまい、遅れてしまう、と言っていた。
寿仁葉さんは、昼夜が逆転している、ともナレーションが言っていた。
普通であれば、なりたい職業になったのに、なぜ遅刻などという簡単に防止できることすら出来ないのか?遅刻さえしなきゃいいのに、なんて思ってしまう所だが、もっと根深い原因がこの舞妓という職業に潜んでいる。
見ていた人は分かった人も多いと思うが、遅刻の原因は、休みがなく薄給で、もうやりたくない、ということである。
しかし、それを口に出して女将さんには言えない。
お世話になっているし、何を言われるか分からないし、送り出してくれた親に対して申し訳も立たない。
だから、どこにも吐き出せない気持ちが、遅刻をする、という無言の抗議になって表れるんだと思う。
あわよくば、クビにして欲しいという、無意識に潜んだ現実逃避。
月に休みが二日、給料は小遣い程度、という常軌を逸した生活スタイルを、寿仁葉さんは4年、先輩たちは6年もやってきた。
むしろ、よくやっている思う。
仕事が、稽古が楽しくて楽しくてしょうがない、それが6年間持続できる、という超レアな人ならまだしも、そうではない普通の人にとって、これで休みが月に二日って、気が狂うと思う。
それに、芸事だけを毎日繰り返しやり続けることが、芸事の向上に必ずしもつながるとは全く思わない。
たまには芸と関係のない出来事や、一人で過ごすことが刺激になり、またやりたいと思えることもあるだろう。
例えば、月に100万もらえるなら、休みが2日でもまだいいかもしれない。
もしくは、毎日テレビに出る一線級の俳優やタレントや歌手、誰もが知る大企業の社長、などが、こぞって毎日押し寄せ、彼らに対して接客できる、というのなら、小遣い程度しかもらえなくても、休みが2日でもまだいいかもしれない。
だけど、決してそうではなく、お金を持っているけどよく知らないおじいちゃん社長たちばかり毎日接客し、それがない時は稽古、そして休みは月に2日、お金は小遣い程度しかもらえない。
刺激もなければ、金銭としての報酬も自由時間もない。
江戸時代とか、昔であれば、舞妓という職業が、今で言うテレビに出ている様な華やかな人達であり、薄給で休みなしでも良かったのかもしれない。
だけど今はそうではない。
働き方が時代に合っていない、というだけでなく、舞妓・芸妓という仕事の存在自体が時代の最先端にいないことに、運営している側は気付いていない。
そんなことを言うのは芸事に対する情熱がないからってか?
こんなマイナスを補えるほどの、芸事に対する情熱ってなんだ?
知らないだけかもしれないが、舞妓・芸妓のすごい人を見たことがないから、自分がもしやるとしたら、目指しようがない。
それこそ、中谷美紀のような品が良い姉さんたちがゴロゴロいて、芸もすごい、立ち振る舞いも秀逸で人をあっという間に魅了してしまう、という様な人達が、キラキラしながらたくさん活躍しているなら分かるが、そんな人もいなんじゃないか?
競馬とか競輪学校の様に、頑張れば億万長者になれるならお金という意味でも夢があるし、自衛隊の様に給料がそれなりに出るなら働きがいもある。
しかしそうではなく、かといって目指すべき明確な目標もない。
辞めていくのは当然だろうと思う。
この働き方では、ほとんどの人にとって、やり続けたいと思う動機がない。
舞妓・芸妓という文化をちゃんと継承していく、という観点で考えると、働き方を改善することは、文化を途絶えさせない大きな土台になると思う。
高い給料は無理で小遣い程度が変えられないなら、せめて休みは週二日、月に8~10日は絶対になくてはならない。
それだけで、辞める率は劇的に減ると思う。
むしろその方が、応募してくる人は倍増すると思うし、休みの間に色々出かけたりして、経験を増やしていく方が、舞妓・芸妓としても人間的に深みが出て良いと思う。
もしかしたら、恋人が出来たりしてのめり込み、芸事どころではなくなる、という人も出てくるかもしれないけど、そうなったらその人はそれまでだろう。
というか、お小遣い程度なんだから、そんな遊びも出来無さそうだが。
いや分からない、相手に出してもらえばいけるか。
まあ、それは置いておいても、まずその働き方自体で、そもそも弟子入りしようかなとすら思わない人がほとんどだと思う。
運営している側は上記に上げたようなマイナス面が見えずに、いつまでもずっと間違ったやり方で行こうとしている。
誰かが危機感を感じて変えていかねば、本当にすたれると思う。
きっと、こういう状態に陥っている伝統芸能は、探したら結構あるのかもしれない。
寿仁葉さんが今後続けるとしても、この仕事は、およそずっと継続していける業態ではないと思う。
誰かに何とかしてほしい。


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